口腔ケアの必要性
 高齢者は医療を受ける機会が多いことから、年々医療費の高騰が国の財政の大きな負担となっています。それに反して、歯科外来者数は60 歳代をピークに大きく減少している現実があります。医科と歯科で違った動きがみられるのは、歯科は外来診療が中心のため、外来に訪れることができる、ある意味限られた人たちが対象であると考えられます。
 歯科医療サービスを受けられない人たちの口腔内は入れ歯や天然歯で補っている補綴物が、適温で居心地の良い口腔内で細菌増殖の温床となっており、そこから発生する歯周病菌が誤嚥性肺炎など様々な病気の引き金となっていることが近年の研究から分かっています。
 例えば、狭心症や動脈硬化による心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、
関節炎、腎炎、メタボリックシンドロームなどを引き起こします。日常の歯磨きや入れ歯の清掃・手入れなどを十分に行い細菌の繁殖を防ぐための口腔ケアこそがこれらの病気の発症を低減させ、結果として医療費の削減に大きく寄与するものと考えます。
 この機会にご家族のケア、施設で従事されている方々が口腔ケアの重要性をご認識され、高齢者の健康を守る一助にご活用いただければ幸いです。

口腔ケア指導士の役割
1.日常的な口腔ケアの普及ならびに在宅療養者と歯科医師、歯科衛生士との間にあって効率的なコミュニケーションに貢献すること。
2.在宅療養者への日常の口腔ケアを行い、不健康寿命と呼ばれる時期を減らすこと。
3.口腔ケアを通じて歯周病菌に起因する疾患を予防し、医療費削減に貢献すること。

社会に貢献できる口腔ケア指導士の資格を取って、充実した人生を送って下さい!!

人間にとっての一番の幸せは「天寿を全うするその日まで自分の口から美味しく食べられること」です。

経管栄養で命脈を保つ事は「生きている」のではなく「生かされている」だけ、そして、美味しく食べることが全身の健康に直結することは今や常識です。介護に関わる方々の目標は、介護を受ける方々を幸せにすることです。口腔ケアの本質を理解し、スキルアップする事はご高齢者と専門職との間をとりもつ大切な役割を担う人々の幸せに直結する大切な仕事です。

日本歯科大学客員教授 井荻歯科医院 院長
日本歯科医師連盟 会長

高橋 英登

試験詳細